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杏里の楽美(旅)日記

今こそ、人間らしくあろう。20代旅人が鳴子で語り合った人生観とは?(47都道府県出張ネイル〜10/47宮城編〜)

山形の天童温泉を堪能し、そこから電車で新庄駅まで一旦北上。2両編成のJR陸羽東線に乗り換えて、窓の外を眺めていた。路線を囲むように連なる白い山々と、その間を電車の走る方向に沿って流れてくれている川。その景色は、1時間以上電車に揺られながらもずっと飽きずに眺めることができ、普段移動中にやるはずのInstagram更新の手が止まっていた。東北旅最後となる目的地は、宮城県の鳴子温泉郷だ。

電車を降りて鳴子の道を歩くと、足湯に入れる温泉、そして大きなこけしが佇んでいるのが目に入った。優しそうなおばあちゃんがやっているお店でおしるこを頼み、それを待ってる間も畳の先に並んでいる何体ものこけしが目に入る。雪が降る中で向かった今回のアポイント先は、「桜井こけし店」。遡ること江戸時代、鳴子こけしの創始者と言われる大沼又五郎から、代々伝統を受け継いでこけしを作り続けている歴史あるお店だ。

スーツケースにこけしを忍ばせて。桜井こけし店の児玉さんに話を聴いてみた!

今回お話を伺ったのは、桜井こけし店で接客販売をしている(取材当時)スタッフの児玉さんだ。お店にズラリと並ぶこけし達に見守られながら、ネイルとインタビューを始めた。

児玉さん「ずっとやってるんですか、この出張というか旅は?」

入り口のこけしさんも存在感強め。

リッホ「出張ネイル自体は前からやってるんですけど、47都道府県は今年からやってて。元々カナダのワーキングホリデーをしてネイリストになったっていうところからスタートしているんですけど、やっぱり旅が好きなのもあって今でも色んな所に行ってます。」

児玉さん「私もワーホリでオーストラリアのメルボルンに行きました。私は飲食店2つ掛け持ちしたり、ベビーシッターもやったりしました。実はメルボルン行く時もこけしをスーツケースに忍ばせて行ったんです、お供に(笑)。」

鳴子では毎年9月にこけし祭りという全国各地からこけし好きな人が集まるお祭りがあるという。オーストラリアから帰国してきた児玉さんは、そのお祭り後のタイミングで桜井こけし店の会社(株式会社こしき)とご縁したという。海外、とりわけヨーロッパからの注文も多く入るという桜井こけし店にとっては、海外への販路拡大に向けて英語でやり取りができる人を求めていたのだそうだ。こけしをオーストラリアまで連れて行く児玉さんは、相当こけしにご縁が深いお方なのだろう。

こけしに見守られながらのネイル。

こけしの魅力、手仕事の魅力。

リッホ「児玉さんにとってこけしのどんなところが魅力ですか?」

児玉さん「最初の最初は1個家に連れ帰ってきて、何気にテーブルのそばに置いていて、目に飛び込んでくる度になんかちょっと癒やされるなって思い始めて。そこからこけしの作り方や仕事の話を聞いていくと、こけしって木の丸太で仕入れているところからやってるというのを知って。木の皮をむいたり乾燥させたりとか、全行程やるんです。手をかける部分の多さが分かったらより面白くなって。

リッホ「えー、あの大きな丸太から仕入れるんですね!」

お店の中にはこんなこけしさんも!

児玉さん「そうなんです。あと作る人によってこけしの表情だったり模様とか纏ってる空気感とか、そういったものが違っていて。それがなんというか、作り手の人柄が滲み出ているというか、そういったところはすごく人間らしくて良いなって思って。それが魅力ですね。」

ネイルをやっていてもそうなのだが、例えば人によって同じお花柄のデザインを描いてもなんとなく雰囲気が違っている。職人の手仕事に人柄が出るというのは、きっと色んなジャンルのものづくりに於いて共通していることなのだろう。

「岩蔵イズム」から学ぶ仕事への向き合い方。

リッホ「桜井こけし店さんが、こけし作りにおいてどういう思いを大事にしているのか聞きたいなって思ったんですけど、コンセプトとか理念みたいなものってあったりするんですか?」

児玉さん「やっぱり大事にしているのは、その先代たちから受け継がれたものを受け継ぎながらも、新しいことに代々挑戦するっていうことですね。あと一緒に職人さんと仕事していて感じるのは、先代たちへの愛情がすごくて。尊敬の気持ちとか、先代の話をしない日は無いです。毎日聞きます。

絵付け体験もできますよ。

時代ごとに新しいことをしていくということ、伝統を受け継ぐこと。この2つは尊敬と愛情によって結ばれて、素敵なリニューアルをしながら後世に続いていくのだろう。歴史と伝統が長い業界は、よく新しいことをする人が出てくる度に軋轢が生まれるという話を聞くけれども、桜井こけし店さんのような温かい思いや会話がどの世界にも繰り広げられていたら良いなあ。

児玉さん「先代の岩蔵さんっていう人が、桜井家の中でもこけし界の中でも、結構新しいことをする人だったんですよ。桜井こけし店の中では岩蔵イズムってよく言ってるんですが、“もの”への向き合い方とかこだわりが、ちょっと尋常じゃなくて。道具ひとつとっても、桜井家は例えばひとつのものを作るのに、刃物がずらって連なって並ぶ感じで。刃物三つで済むところを倍の量用意していたりとか。道具への探究心みたいなものかな。なんかもっと違うものがあるんじゃないかとか、違う分野のものを見て取り入れてみようとか。それが今も結構影響を受けていて受け継がれています。

リッホ「ちょっとその気持ち分かります。道具も安くはないので、一回良い道具に落ち着いちゃうと長年その道具だけでやることもあると思うんですけど、やっぱり違うものを取り入れることによって、よりレベルアップできたり発見もあるので。一個に凝り固まりがちみたいなところがあったりする中で、新しい道具ややり方を探求するのは辞めちゃいけないなって思うんです。」

その探求心が”岩蔵イズム”という形で後世に受け継がれるぐらい、それをやり続けたというのは、日々デザインを作り続けるネイリストからしても尊敬の領域だ。先代の伝統を受け継いだこけしの模様を敬意をもって参考にし、児玉さんの手でこけしができあがるようにネイルを施していった。

人間らしくいよう。児玉さんのモットーと今後は?

児玉さん「あんまりモットーを意識したことは無いんですけど、何をするにしても人間らしくいようと思っていて。接客する時も対人間としてというか、一人の人として接しようと思っていたりとか。仕事を選ぶ時とかも、こんなに機械化されたこの世の中で、それでも自分達の感覚を使いながら、手でものを生み出す人たちに囲まれてみたいなって。鳴子に住むのも、人が作った町というか都市的なところではなくて、なんかこう自然を感じながら過ごせる場所に住みたいなと思ったりとか。全部共通して人間らしくあろうっていうのは、常に選択する上で決めてることかもしれないです。」

リッホ「確かにそれって大事ですよね。いくら時代が進むとはいえ、人間の感覚をちゃんと研ぎ澄ませられる環境に身を置くっていうのは、人間としてというか生き物としてナチュラルでいたいなってころだと思いますね。今後、そういうスタンスの中でやっていきたいこととかってありますか?」

ちゃんとこけしになります

児玉さん「そうですね、今後はバルト三国や北欧に行こうかなと思っています。前々から北の文化に興味があって。特に北欧の人の雰囲気とか、手仕事の素朴な感じとか、なんかちょっと東北と通ずる部分があるなあと思っていました。他の土地に暮らしながら、東北との共通点を見つけたり、逆に今まで知らなかった文化や価値観などを知ることで、最終的には自分が心から良いなと思える暮らしが送れたらと考えています。

リッホ「理想のライフスタイルを追求していく感じですよね。楽しい。」

児玉さん「人生をかけて追求したいなと思っています。こけしは元々好きだったんですけど、鳴子に住んで、桜井こけし店で働いて、より一層好きになりました。なんというか、暮らしてみて初めて、こけしが鳴子というこの風土から作り出されるものなんだなというのが感覚的に分かって。東北と北欧は環境が近い分、そういった感覚的な部分も理解してくれる方が多いんじゃないかなと思います。次に海外に行くときには、そういった一歩踏み込んだこけしの布教活動なんかができたら良いなって思っています。」

児玉さんありがとうございました!

時間の流れを忘れるぐらい穏やかで、でも意思があって、そこにいるとすごく優しい気持ちになって心地が良いのに、そこから広がる景色はすごく、なんというか、雄大。こけしが纏う雰囲気が鳴子温泉郷の土地柄に通ずるところがあるように、児玉さんのお話と、鳴子温泉郷の雰囲気が限りなく近いものがある気がした。会話の中でも出てきた、“なんというか”っていう感覚は、大切にしたいなあ。電車を何回も乗り継ぎ、春がもう少し先の雪景色を窓から眺めながら、3月の東北を後にした。

To be continued…

【宮城編:児玉さんから学んだこと】

・手作りのものから漂う”その人ならでは味”を楽しもう。

・使っている道具やアイテムを今一度見直し、こだわってみよう。

・機械化されている環境でも、人間らしい選択や行動を意識しよう。

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