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杏里の楽美(旅)日記

今の時代こそ古の文化を感じて!日本酒から現代の豊かさを考えてみた。(47都道府県出張ネイル~5/47新潟編~

富山市ガラス美術館を後にして、次に向かう先はバスで更に日本海側を北上して3時間ほどのところ。日本一の蔵元数を誇る日本酒の激戦区、新潟県だ。

車が運転できないリッホは、ネイル道具を引っ張りながら公共交通機関を駆使して全国を巡ろうとしているわけだが、今回の目的地は新潟駅から徒歩で立ち寄れて、酒蔵見学もできるとてもオープンな酒蔵さんだ。

~今代司酒造株式会社~

大通り沿いを歩いたところで一目見て分かる、歴史の香りが漂う風貌。靴を脱いで入り口の暖簾をくぐると、もうそこからは江戸時代にタイムスリップしたような、ずっしりした空間が広がっていた。

純米酒?大吟醸って何?そういえば知らない日本酒のあれこれ。

今代司酒造の酒蔵見学では、日本酒が実際どのように造られるのかをぐるりと歩きながら間近で見ることができる。見たこともない数々の道具、貯蔵、発酵されている日本酒の量、迫力は圧巻だ。

スタッフさんが分かりやすくご説明してくれるよ!

江戸後期から明治初期の新潟は、人口が江戸より多かったと言われるぐらいに繁栄していたそうで、今代司は当時お酒の卸業や旅館業、飲食業をしてたいへん繁盛していたそうだ。この地域の水質や地盤が良いということから、明治中期から沼垂(ぬったり)の地に蔵を構えて、酒造りに本格参入されたそうだ。ぬったりは他にも多くの酒蔵、味噌蔵、醤油蔵が建ち並び、「発酵食の町」として知られている。

そういった歴史や日本酒の諸々をスタッフさんに教えてもらい、お米を磨く度合いによって日本酒の呼び方が違うのだなというたいへん初歩的なことを学びながら、リッホはだんだんと日本酒を飲み比べたくなっていた。無知は好奇心をも起こさない。逆に少しでも行って触れてみると、好奇心は湧いてくるものだ。日本酒好きなお客様に日本酒ネイルをオーダーされ続けて半年、やっとこさリッホは新潟に赴いたことで、日本酒の扉に手をかけた。笑

今だからこそ、知っておいたら文化人。お酒で日本を嗜もう。

酒蔵見学を終えてから、スタッフさんで新潟出身の小林さんにネイルを施しながら、日本酒のあれこれを伺ってみた。酒蔵はお酒好きな酒豪しか働いていないのかと思いきや、小林さんはお酒は嗜む程度に飲まれるお方。ある意味フラットに色々とお話することができた。

リッホ「今代司さんで働いてから、何か日本酒に対してのイメージで変わったこととかありますか?」

小林さん「1番は、日本酒美味しいなって思いました。大学時代とか、日本酒に対しては度が強くてあんまり良いイメージが無くて、なんか飲まされるみたいな感じで(笑)。でもちゃんとお食事と合わせてみたりとか、お店の雰囲気とかでも、味って全然違うし変わるんだな~って思って。新潟って、ちゃんと雨降る季節は雨降るし、雪降る季節は雪降るし、すごくはっきりしているので、食材とか季節の風景とか、すごく『ああ日本だな~』って感じられるんです。日本酒に合わせた食材を見つけたり考えるのも楽しいです。」

確かに、学生時代の日本酒に対するイメージは、「罰ゲームで飲まされるお酒」みたいなものだ。とりあえず飲み会だ、とワイワイ飲んで、潰れて…という苦い思い出がある人にとっては、お酒の良さが分からず敬遠したままということもあるのだろう。こと今の時代においては、そもそも酒類の提供も厳しい環境になってしまっており、お酒に触れる機会も少なくなっている。

小林さん「私もまだ勉強してる身なので、一個人的な意見なんですけど、敷居高そうというか、初心者の人が入りづらそうだなっていう印象があるんですよね。プレゼントで日本酒を買いに百貨店の酒売り場に行っても、何を買って良いのか聞いても良く分からなくて、結局値段で決めるみたいなのが多かったので…。今になって、あれ間違ってたな~みたいな(笑)。ちょっとでもいいので知っておくだけで、贈り物とか愛情込めて贈れますよね。

ここ数年はコロナで閉ざされ気味の世の中が続いている。(特段日本はその風潮が強く感じるが…)でもそんな今だからこそ、もっと日本を見つめて、日本人としての自分を深めて、熟させる良い時間でもある。そのひとつの基準として、「日本酒に触れてみる」ということは豊かな文化人への第一歩になり得るだろう。

日本酒ラベルこそアート!今代司の定番商品をネイルに!

そんな中で、今代司酒造は若い人達や日本酒初心者に手に取ってもらえるようにと、酒蔵見学を始め様々な取り組みをされている。今回どんなネイルにしようかと今代司さんのパンフレットを拝見したときに気づいたのは、実にキャッチーで様々な個性が溢れる日本酒ラベルのバリエーションだ。

小林さん「うちって割とポップなデザインが多いです。お酒のラベルとかって結構習字で書かれてたりとかが多いんですけど。うちはデザインとかもシンプルで今っぽいやつにしてるっていうのもあって、若い人に手にとってもらうことも多いです。」

リッホ「ジャケ買いっていうのもすごくアリですね。どんな味がするんだろうこのラベル?みたいなところから入ってくる人とかもいそうですね。」

小林さん「私とかまさにそんな感じで。まず可愛いやつから買おうって(笑)。うちもそこが洗練されているデザインを目指してると思います。中身は中身で勿論造り手に頑張ってもらって。」

今回のネイルは、今代司の最上級酒、「純米大吟醸 今代司 極上」と、最も人気の銘柄「錦鯉」のラベルを施してみた。定番商品の「錦鯉」はお祝いごとの贈り物としても購入されることが多く、ラベルも良い赤、白、金と縁起の良い鯉の模様。

昔、まだ日本酒が樽詰めで出荷されていたころ、出荷前にお酒に水を加え、かさ増しして売ることが許されていた時代がある。金魚も泳げるほどに水で薄まった酒を揶揄して「金魚酒」と呼ばれていたそうだ。その中でも水で薄めなかった今代司は、酒屋さんから愛され評判を呼び、「金魚酒」を売らずして今や堂々の「錦鯉」が人気商品となっているこの歴史は、知るととっても清々しい。

今と昔を「むすぶ」ために。今代司で働く、小林さんのモットーは?

小林さん「酒蔵は人数が少なくて、色んな仕事をするんですね。大変な仕事とか体力仕事とかが出るときもあって、これもやんなきゃいけないのかって思うこともたまにあるんですけど、でも『面倒なことほど重要だ』って宮崎駿監督が言ってて。確かに大事だよなって思ってます。うちの酒蔵は、昔のラベルとか、古くて昔のものがすごいいっぱい出てくるんです。保管も綺麗にされてなくて、そのまま放置しておくと何十年か後には無くなっちゃうので、歴史がちゃんと紡がれていないなって。そこで、大変だけどやっておこうって奮い立たせております(笑)。」

リッホ「出てくるんですか!?(笑)」

小林さん「古い蔵なので、あらゆるところから宝物のように出てくるんですよ(笑)。」

にいがたの 今と古 むすぶこと 今代司酒造

酒蔵の入り口に書いてあったこの言葉を写真に収めて、最後にテイスティングもさせてもらって、新幹線に乗る前にへぎそばとたれカツ丼セットを食べて、北陸旅に終止符を打った。毎月国内旅行は、太るなあ…と思いながらも、こんなに食べ物が美味しい日本に生まれたことに、改めて楽しさと有難さを感じる。

今代司酒造の公式HPの一部を引用すると、「お酒というものは、人の生死において無くてはならないものではない」。しかし、生活必需品が揃い、物が満ち足りている今の時代の日本においては、「人の豊かさにおいて無くてはならないこと」を考えたい。日本酒をはじめとした、先代が紡いだこの国の文化にアンテナを張るということは、間違いなくそのひとつなのだろう。

【新潟編:小林さんから学んだこと】

①日本酒を知ることは、粋な贈り物ができる人にもなれる!

②四季折々を感じられる日本だからこそ、楽しめる文化がある。

③面倒なことほど、歴史を繋げる大事なことにもなり得る!

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